第218章 ママは夜通し引っ越したのかな

夜市のきらびやかな灯りが地面に反射し、男の横顔だけがどこか翳って見えた。

長谷川栞は、彼がエンジンを切って車を停めるのを見届けると、そっと振り返り、胸の内で呟く。

――来た。

数秒だけ迷ってから、先に口を開いた。

「あなた――」

「栞、腹減ってない? 何か食べたいものある?」

長谷川栞の瞳がわずかに揺れた。思わず言葉が漏れる。

「……それだけ聞きたいの?」

どうして出かけたのか、誰に会っていたのか。そういうことは何ひとつ聞かないのか。

中野航平は顔を背け、彼女の視線から逃げるように「うん」とだけ答えた。

窓の外は、夜市の喧騒。けれど彼の脳裏には、さっきカフェの外で見てしま...

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